学校生活の中で一斉に全員を「呼名」(子どもの名前を呼ぶこと)して、子どもたち一人ひとりを「点呼」(出席と表情などの確認)したのは、いつ以来でしょうか。先週の土曜日、小学部低学年の学級担任から依頼されて、朝の会で子どもたちの名前を読み上げる機会がありました。
中学校教員が長かったこともあるのでしょう。私は全生徒を呼名したのは入学式と卒業式だけです。それも「こいずみ あつし」と呼びすてです。それに比べ、今回は子どもたちの今か今かと待っている表情が凜々しく、愛おしい気持ちになりました。「〇〇さん」と名前を呼ぶこと、呼ばれることって、本当に良いことですね。
今週は国連が制定した「貧困撲滅のための国際デー」です。 今から約1300年前に編まれた『万葉集(まんようしゅう)』に、山上憶良(やまのうえのおくら)の「貧窮(ひんきゅう)問答歌(もんどうか)」があります。その中に、次のような長歌があります。
世の中を うしとやさしと おもへども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば
(In this sad world, I feel small and miserable, but I cannot fly away as I am not a bird)
「世の中は嫌なものだ、恥ずかしいものだと思うけれど、飛び去ることもできない。鳥ではないのだから」 「こんなに辛くて苦しいのに、鳥のように飛んで逃げていくことはできない」。そんな思いを伝えています。 貧困というとアフリカなどの遠い国のことを思い浮かべがちですが、日本でも7人に1人の子どもが貧困状態にあるといい、自分たちの身近な問題として考えることは大事です。良識ある社会をつくれるかどうかは、これからの時代を生きる子どもたちへ提供する環境や教育に大きく関わります。 先日、補習校の生徒会がオンラインで「おにぎりアクション」への参加をお願いする動画を配信して、アフリカ・アジアの貧しい子どもたちに給食を寄付する活動を呼びかけていました。
まず、知ることからはじめ、これからの世界を考えるために、できるところから行動に移していきたいものです。 国連難民高等弁務官だった緒方貞子さんが、次のような言葉を残しています。「自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから」。“一人はみんなのために、みんなは一人のために”の社会を実現することが、貧困をなくしていく近道だと思います。
2020年10月16日
ジョージア日本語学校
校 長 小 泉 敦