top of page

はなみずき 12/10/2021 #29 (第58号)

補習校の図書室で中村哲『希望の一滴~中村哲、アフガン最期の言葉~』(西日本新聞社 2020年)の新刊書が目に留まり、借りて読んでみました。 2019年12月4日、アフガニスタンで医療や灌漑、農業支援に尽くした医師・中村哲さんが73歳で凶弾に倒れてから2年が経ちます。 中村医師は干ばつや戦乱で荒廃したアフガニスタンで復興支援に力を尽くし、アフガンの大地に1600の井戸を掘り、65万の命を支える用水路を建設、不毛の地に緑を蘇えらせる活動を35年間続けていました。


本書は中村医師による“言葉”を、アフガンでの活動の足跡を示す写真とともに紹介したもので、中村医師の行動が徹底した現場主義にあったことが分かります。「提唱するのは、人権や高邁(こうまい)な理想ではなく、具体的な延命策である」(2018年6月) 劣悪な環境の中、事業を継続させた背景には中村医師の人間へ対する“やさしさ”がありました。「必要なのは思想ではなく、温かい人間的関心であった」、「彼らの願いはただ二つ、1日3回の食事がとれること、家族一緒に故郷で暮らせること」(2019年6月) 「経済的な貧困は必ずしも精神の貧困ではない。識字率や就学率は必ずしも文化的な高さの指標ではない」(2019年9月)という言葉の中に、“本当に大切なものは目に見えない”と言ったサンテクジュペリ(『星の王子様』)の思いに通じるものを感じます。 中村医師の活動は、志をもって歩み続ければ、道は必ず拓けることを教えてくれます。海外に暮らす日本人として、考えさせられる書物でした。


ここにきて、新たな変異ウイルスの不安が出ています。 補習校として、引き続き万全を期しながら学校運営に当たっていく考えです。そこで保護者の方々へ向けて、学校生活の決まりを明記した「施設利用者約款」(改訂版)を、近日中にお知らせします。 今後ともご理解、ご協力をお願いいたします。


2021年12月10日

アトランタ補習授業校

校 長 小 泉 敦

Recent Posts

See All

約3年間、登校日に合わせて発行してきたハナミズキが最終号(通算111号)となります。本来であれば、41(授業日数)×3(年)=123号となるはずでした。第1号の発行は2020年9月6日、数字にはこの間のコロナ感染に翻弄された状況が反映されています。 私は86年夏、父の死をきっかけに京都での学生生活を終えて、青森県で中学校社会科教員となりました。その後、インドネシア・ジャカルタ日本人学校3年、香港日

今年も3・11が巡ってきます。大きな悲しみに包まれた東日本大震災の発生は今年と同じ“うさぎ年”、あれから12年が経ちます。「行って来ます、行ってらっしゃい」、「ただいま、おかえり」のある、日常の有り難さを思います。 昨年の秋以降、小学部5年以上の教室へうかがい出前授業をしました。一期一会の出会いを大切に、短い時間でしたが、子どもたちと向き合いました。 自己紹介したあとに、30歳で『アンネの日記』を

弥生3月に入りました。思い起こせば3年前、この時期からコロナ感染が広がり、日本の学校では登校自粛、卒業式の延期・中止が議論されました。私は保護者の合意をもとに午前授業を続けて、予定通り卒業式・修了式を行いました。現職校長として最後でしたので、安堵したことを覚えています。 その後、4月初旬の渡米がキャンセルとなり、青森―アトランタをつなぎオンラインでミーティングをしましたが、歯がゆい思いでした。よう

bottom of page