卒業生の皆さんへ
明日、アトランタ補習授業校(ジョージア日本語学校)を卒業する皆さんへ
「メッセージ」を贈ります。少し難しいかも知れませんが、読んでください。
まず、平和の問題です。
自分の眼で「現実」を見ることは、とても大切です。
私は若い頃、自分の足で日本や世界の各地を訪ね、「現場」を見て廻りたいと思いました。学生時代にまず行ったのは広島と長崎です。
初めて海外へ出かけたは30歳となった1990年、ポーランドのアウシュヴィッツとオランダのアンネ・フランクハウスでした。
一方、日本人として忘れてはいけないことがあります。それは中国や東南アジア諸国で行った戦争のことです。戦後76年が経った今でも、沖縄やアジア諸国、アメリカの祈念館・博物館などで、戦争の足跡を学ぶことができます。
現在も世界では戦火が絶えません。争いの連鎖は今も断ち切れそうにないように見えます。しかし、人間の手で始めた争いは、人間の手で防げるはずです。
『ユネスコ憲章』は、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、
人の心の中に平和の砦を築かなければならない」と謳います。
これは、争いを起こそうとするのは人の心、
争いを起こさせないとするのも人の心だということを伝え、
争いを起こさない心の輪を広げて、結んでいくことの大切さを教えます。
次は、民主主義の問題です。
『日本国憲法』には、様々な自由や基本的人権の尊重が書かれています。
言いたいことを言う自由、どんな宗教を信じてもいい自由などです。
しかし現在、本当に民主主義が大事にされているでしょうか。
今、皆さんは新聞を読み、ニュースを見て、社会の動きをしっかりとらえ、
自分の意見をハッキリと言えるようにすることが大事です。
本を読むことも大切です。「鉄は熱いうちに打て」です。
広く、深い視野をもった、魅力的な人になって下さい。
最後は、これからの世の中のことです。
世界には未だにストリートチルドレンやホームレスがいる一方、
超高層ビル群やネオン街がひしめくという、「貧富の問題」が存在します。
かたや世界には、豊かな自然や温かい笑顔、ゆったり流れる時間もあります。
だから今、世界中が未来へ向けて、ゆっくりと前へ進むことを信じたい。
“一歩後退、二歩前進”のあゆみです。
皆さんがこれから歩んでいく道は、
必ずしも自分の思うようにいかないこともあるでしょう。
そんな時、大切なのは同じ悩みをもつ“仲間”をさがして、
いっしょに考えていくことです。応援しています、頑張って下さい。
最後に、私の好きなチャップリンの「言葉」を贈ります。
どこまでも続く長い道でも、ゴールは必ずある。
どんなにつらくてもゴールした時の喜びは、ダイヤモンドにもかえがたい。
だから、僕は生きている。
2021年3月26日
アトランタ補習授業校
校 長 小 泉 敦